ここでは,近年の研究内容を記載しています。
過去の大会論文および博士論文についてはPublicationを参照して下さい。
鉄筋コンクリート造建物で使われる耐震壁は柱,梁に比較して剛性,耐力が高く,優れた耐震要素として設計されます。地震時には耐震壁は主に面内方向(壁方向)で水平力に対して抵抗しますが,同時にあまり強くない面外方向(壁と直交する方向)に変形し,鉛直方向に作用する軸力も変動します。しかし,現行の設計体系ではこの面外方向変形の影響がほとんど考慮されておらず,引張軸力が作用する耐震壁の実験も多くはありません。
そこで本研究グループでは,耐震壁に対して水平2方向と鉛直方向の合計3方向から荷重を作用させ,引張軸力や面外方向変形が耐震壁の破壊性状や,剛性,耐力などの構造性能に与える影響を解明します。そして,耐震壁の破壊モード,耐力,変形能力を十分な精度で把握できる評価法を考案し,より適切な耐震壁の耐震設計法を提案します。
載荷装置組立の様子 / Loading Setup | 有限要素解析のモデル / FE Analytical Model |
2016年に発生した熊本地震では,新耐震基準で設計されたRCピロティ建物においても大きな被害が発生しました。その中には,下記のような1階ピロティ柱のせん断破壊や連層耐震壁の1階脚部のすべり破壊をはじめとした様々な被害がピロティ階である1階に集中したRC集合住宅もありました。
1階ピロティ柱の被害 / Column in Soft First Story | 1階耐震壁の被害 / Shear Wall in First Story |
本研究では,上述のRCピロティ建物を研究対象とし,1階がピロティとなる建物の構造性能の把握を目的として,
柱縮小試験体最終破壊性状 / Failure Mode of Column Specimen |
建物解析結果 / Result of Analysis on Building |
現在は非線形立体骨組解析を用いた,構造スリットが建物全体に及ぼす影響に関する研究等に取り組んでいます。
高周波熱処理とは,電磁誘導作用により鋼材を急速に加熱した後,急速冷却を行うことで金属の強度を向上させる技術です。本グループでは,高周波熱処理を施したブレースやダンパーなどの構造性能について研究を行っています。
ブレース/Brace
ブレースは耐震要素として新築建物や耐震補強に幅広く利用され,地震国においてきわめて重要な部材の一つです。本研究では高周波熱処理を利用することで,優れた降伏後および座屈後挙動を有するブレースの開発を行っています。
ダンパー/Damper
近年,建物の被災後の継続使用性に注目が集まっています。アンボンドプレストレストコンクリート構造では,被災後の早期復旧を目指して交換可能なダンパーを外付けで取り付けることが試みられています。従来のダンパーは,中央部の径を一定の長さにわたって細く切削することで降伏箇所を誘導しますが,本研究では,部分高強度化することにより降伏箇所を誘導可能なダンパーを開発しています。
ダンパー実験時の様子 / The damper during the test |
日本建築学会による「鉄筋コンクリート構造保有水平耐力計算規準(案)・同解説」では,袖壁付き柱部材の部材種別判定に関して柱部材の判定基準を準用する既往の手法に対し, 袖壁厚さ比や柱主筋量を考慮した軸力比などの新たな判定指標を加えるとともに,壁端部拘束筋による部材種別の格上げを可能とするという記述があります。しかし,このような条件を満たす袖壁付き柱に対する研究例は非常に少ないのが現状です。また,既往の実験は縮小試験体を対象としたものであり,実際の部材との構造性能の差(寸法効果)についても検討する必要があります。
このような現状を受け,本研究では上記のような条件を満たす袖壁付き柱部材に対する実験を行い,袖壁端部の軸方向鉄筋が座屈した後,破断することで大きく耐力低下するということを明らかにしました。
現在は有限要素解析をはじめとする解析により,さらに詳細な力学挙動の検討を行っています。
実大および縮小試験体 / Specimens |
近年,急速な経済成長と人口増加により世界のエネルギー消費量は大幅に増加しており,世界各国で自然エネルギーによる発電設備が発展しつつあります。 風力発電もその1つで,日本はヨーロッパに比べその導入割合は低いものの,島国であるため特に海上風車としての建設が期待されています。
平成30年8月の台風20号の影響により北淡震災記念公園の敷地内に設置していた風車が倒壊しました。
本研究では倒壊した風車が残る敷地の現地調査を行うとともに,風車の基礎部分に着目し,基礎の打ち継ぎ面の力学挙動を解析により評価し,その倒壊原因の検討を行います。
アンボンドPCとはシース管内にグラウトを注入せずにPC鋼材を定着させたもので,地震後にひび割れや変形がほとんど残留しない高い原点指向性を示します。また,プレキャスト部材の持つ工期短縮や品質向上などのメリットも持ち,注目されている技術です。
プレストレスは常時荷重に対して優れた性質を示すため,梁に関する研究が多く,柱部材に対する研究は少ないのが現状です。
そこで本グループでは,アンボンドプレキャストPC柱について,実験および解析を行い,その構造性能について研究しています。
柱部材実験の様子 / Experiment on Column |